20ヶ年の事業収支

20ヶ年の事業収支ファイナンス・事業収支に関するwebセミナーの最後は長期の事業収支計画についてです。

・病院として、投資回収期間を何年に設定するのが適切なのか。
・診療報酬改定などの外的要因をどのように盛り込むべきなのか。
・「医療の質」と「経営の質」を検討するために重要なことは何か。

といった点について解説します。

費用の算出方法

費用の算出ファイナンス・事業収支に関するwebセミナーの4回目は、『費用の算出』についてです。その費用の中で、最も大きな割合を占める人件費について、

・診療報酬上の人件費
・医療法施行規則上の人件費
・その他の人件費

といった分類で解説します。

下記にレジュメから、費用の算出方法に関する記載を補足掲載します。


■費用の算出方法
病院で発生する医業費用は、固定費と変動費に分類し算出します。

固定費とは、病院の収益や患者数の増減に関係なく、一定に発生する費用を表します。具体的には、以下の(1)人件費、(3)地代・家賃、(4)リース料、(5)減価償却費、((6)その他の費用の一部)、(7)固定資産税等、(8)支払利息が該当します。

反対に、変動費とは、病院の収益や患者数の増減に左右し、比例して発生する費用を表します。具体的には、以下の(2)医薬品・医療材料・委託費、((6)その他の費用の一部)が該当し、収益に対する構成比率によって表すことができます。


(1)人件費
まず、職種別に必要な人数を割り出し、職種別の平均給与単価を乗じることにより人件費が求められます。月額給与は、病院の職種別給与単価を確認するか、統計資料として経営書院『病院賃金実態資料』、各都道府県及び政令指定都市人事委員会による「職員の給与等に関する報告及び勧告」等を活用し算出します。また、近隣医療機関の職員を募集するパンフレットや求人雑誌などに掲載されている数字を参考にするとよいでしょう。

(2)医薬品・医療材料・委託費
医薬品、医療材料・委託費については、収益に対する構成比率を乗じて算出します。この比率については、一般的に既述した全国公私病院連盟・日本病院会『病院経営実態調査報告』ならびに独立行政法人福祉医療機構『病医院の経営分析参考指標』を活用します。 また、同費用については、物価上昇率等を考慮することも必要となります。

(3)地代・家賃
土地・建物を賃借する場合、地代・家賃が発生します。賃貸借契約にて、予め契約更新時の費用や地代・家賃の見直しが分かっている場合、この点も考慮し事業計画を作成することが必要となります。

(4)リース料
医療機器や什器等をリースで調達する場合、その契約期間中のリース料の支払が発生します。また、リース契約満了時に、今回導入した医療機器等を再リースするのか、または一部を再リースし、消耗の激しい医療機器や技術革新の早い検査機器等を新たにリース契約するかなど、将来の診療機能を想定することは、長期の事業収支計画を作成するうえで重要なポイントとなります。

(5)減価償却費
減価償却費とは、固定資産を購入する際の費用を、その経済的な効果が見込まれる期間を通じて合理的に配分することを意味します。この期間を法定耐用年数といい、同年数にて償却する(費用化する)ことで期間損益に反映させ、より実態に近い経営状態を表します。病院の場合、減価償却費として対象になる資産は、建物およびその付帯設備、医療機器、什器、医療情報システム等が挙げられます。
減価償却費についても、先の(4)リース料同様、法定耐用年数経過した後に、今回購入した医療機器等を継続して使用するのか、または一部は継続使用し、消耗した医療機器や技術革新の早い検査機器等を買い替えするかなど、将来の診療機能を想定することは、長期の事業収支計画を作成するうえで重要なポイントとなります。

(6)その他の費用
その他の費用とは、通信費、水道光熱費、備品消耗品費、広告宣伝費、各種保険料などを表します。
この中で、固定費に該当するものと変動費に該当するものが考えられますが、簡便的に算出する方法としては、先の(2)医薬品・医療材料・委託費同様、全国公私病院連盟・日本病院会『病院経営実態調査報告』ならびに独立行政法人福祉医療機構『病医院の経営分析参考指標』が挙げられます。
また、同費用についても、物価上昇率等を考慮することが必要となります。

(7)固定資産税等
固定資産税等とは、土地・建物や医療機器等を購入した場合に発生します。
土地・建物は各々に評価額に税率を乗じたもの、医療機器等の資産については各々の帳簿価額(簿価)に税率を乗じた金額となります。

(8)支払利息
金融機関から借入する場合、金利(変動金利・固定金利)、償還期間(据置期間も含む)などの借入条件を確認したうえで算出します。
尚、これまでお示しした費用の合計額を収益から差引いたものが営業(医業)利益で、そこから支払利息を引いたものが経常利益となります。この金額から税額を引いたものが当期の税引後利益となり、これに非現金支出項目(減価償却費等)を加え、先生の生活費を差引いた金額が借入元金の償還財源となります。

新たな資金調達方法

新たな資金調達方法今回のファイナンス・事業収支に関するwebセミナーは、次の3つの新たな資金調達方法について解説しています。

・プロジェクトファイナンス
・医療機関債(医療公募債)
・地域医療振興債(少人数私募債)

また、事例としてローン担保証券についても触れています。

レジュメには、上記以外の通常の資金調達方法について解説がありましたので、補足掲載します。


資金調達の方法
所要資金調達方法として、主に(1)自己資金、(2)借入金、(3)補助金、(4)リース(割賦販売を含む)の4つの方法が考えられます。資金調達(方法)の検討にあたり、まず自己資金額を決定して頂く必要があります。

(1)自己資金は、病院の手持ちの現金および預金等から当該計画に対し、いくら充当することが可能なのかをご検討のうえ、金額を算出して頂く必要があります。次に、所要資金から自己資金を差引いた額が借入金、補助金若しくはリースの想定金額となります。

(2)借入金は、大きく2つに分類されます。まず、福祉医療機構からの融資が考えられます。同機構の借入については、一般的に金利が低く、償還期間も長いため(長期固定金利)、比較的有利な条件にて融資を受けることが可能となります。その反面、融資相談から実行まで期間に時間を要するため、早めの対応が必要となります。また、制度融資であるため、やや柔軟性に欠ける面もあります。
次に、民間金融機関からの借入を検討することとなります。同機関からの借入については、一般的にはコーポレート・ファイナンスの手法をとりますが、昨今では事業の将来キャッシュフローに着目し、不動産担保に依存しないプロジェクト・ファイナンスの手法もとられています。いずれにしても、借入条件は個々の病院により大きく異なりますので、病院の方から市中銀行へ確認して頂くことをお勧めします。

(3)補助金は医療施設近代化施設整備費補助金を活用するケースが一般的でありましたが、昨今では国の財政難等により同補助金を活用した病院の建替件数は減少傾向にあります(平成15年度134件、16年度108件、17年度64件)。また、補助金を活用することにより、建替等のスケジュールに制約を受けるため、敬遠する医療機関も増えつつあります。

(4)リースおよび割賦販売については、一般的に動産といわれる医療機器や什器等の調達はリース契約、不動産といわれる建物および付帯設備等については割賦販売に区分されます。昨今では、不動産賃貸借契約による不動産リースの形態もありますので、リース会社へ確認される方がよいでしょう。
  リースと割賦販売の経営上のメリットを比較すると、一般的にリースの方が、資金負担が少なくすみます。これは、リース料が全額税務上の損金(経費)として計上できるためです。これに対し、割賦販売で損金計上できる範囲は、支払利息、保険料、固定資産税および減価償却費となります。

診療機能を考慮した収益算出

事業収支セミナー第2回一歩踏み込んだ事業収支 ということで、前回は「消化器系悪性腫瘍による入院」を例に考えてみました。

今回は、さらに

・悪性腫瘍による外来化学療法の場合
・人工透析の場合
・整形外科領域の手術の場合

を例に検討してみます。


前回同様、ブログ側では石川さんのレジュメを補足掲載します。

レジュメより

受療(利用)者数の算出方法について
■今回例示する人工透析治療や悪性腫瘍に対する化学療法については、専用のベッド数と1日のサイクル(クール)数や治療時間によって、最大受療者数が決定します。
また、在宅診療・看護等についても、医師・看護師等が1日あたり訪問できる利用者数を想定します。
患者の病態や治療状況等によって、1ヶ月の受療(利用)回数も異なりますが、受療(利用)者数を算出するうえでは、与条件を設定する必要があります。

使用する医療材料や薬剤等の与条件の設定
■今回例示する整形外科領域における人工関節置換術や、既述した人工透析治療や悪性腫瘍に対する化学療法については、その治療にどのような医療材料や薬剤等が必要となるか、与条件を設定する必要があります。
 ※医療機関によって、また先生の診療方針によっても使用する医療材料等は異なるものと思われます。このため、学会のガイドライン等が制定されているものについては、同ガイドラインに基づき与条件を設定します。ガイドライン等が整備されていないものについては、今後の検討課題といえます。

治療中に実施することが想定される麻酔・検査・管理料等与条件の設定
■特定した手技に対するクリティカルパスや治療計画等を考慮し、与条件を設定します。

差額室料等の特定療養費ならびに全額自己負担となる費用について
■近隣医療機関の相場を考慮し、徴収する費用を設定します。

事業収支計画の基本

事業収支webセミナー病院BPR(経営改革)のwebセミナーは前回で修了しました。
9月からのテーマは、「事業収支・ファイナンス」です。

講師は、株式会社ネクサスの石川専務にお願い致しました。

石川さんは、病院・診療所の事業収支計画の作成を中心に、資金調達支援やM&A支援から診療所のwebサイト構築まで、様々なコンサルティングをされています。

全5回のwebセミナーは、
「診療機能を考慮した、新たな事業収支の策定」がテーマです。

webセミナーはこちらのページから聴講していただくとして、このブログの方では石川さんが用意されたレジュメを抜粋し、webセミナーを補足したいと思います。

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