受講記録ノートより カナダの精神医療保健福祉政策
会場から質問があった、反スティグマキャンペーンの具体的な事例の説明や、まだ日本ではあまり一般的でないサポート付き居住施設やセーフベッドが整備されているというお話などから、精神科病院という特定の場所で集約的にケアを受けるしくみになっている日本との違いを改めて実感しました。オンタリオ州では72のACTチームが活動されているそうですが、これは現在世界で一番整備が進んでいる地域であることを日本精神保健福祉士協会の木村真理子理事が補足して下さいました。一般的なケースマネジメントでは1人のスタッフが担当する利用者は20人以内、ACTの場合は10人以内という比率で、24時間週7日間の継続的なサービスをそれぞれ年間約4万人弱と6千人に対して提供しているそうです。病床が削減されたせいなのか、何か緊急事態があって病院に運ばれてもすぐに適切な治療が受けられるとは限らないという事情もあり、何かあった時には電話連絡を受けたスタッフが駆けつけ、必要に応じてセーフベッド(短期居住のための、病院が関わらない24時間週7日間の支援を提供する施設)を利用できるよう手配したりするそうです。それとは別にサポート付き住宅というケースワーカーないし居住ワーカーの支援が受けられるアパートや、ピアサポート、セルフヘルプも充実しているそうです。このような取組みの結果、オンタリオ州では、医療費全体が削減され、就労支援活動の結果失業率も低下したそうですが、カナダのように精神科病床の代わりに多様な地域精神保健サービスで利用者に個別のケアを提供するというしくみは、今の日本で実践するには地域整備が発展途上であること、利用者負担の問題などが課題となりそうです。精神科病床7万床削減を掲げる厚生労働省が目指しているのは、このカナダのように病床削減した分を地域保健サービスで支える形であるように思いました。精神科病床に限らず、病床削減の目標の一つには医療スタッフを集約して病院では濃厚な治療を提供できるようにすること、があると思いますが、単純に病床を削減しただけでは病院にいた医療従事者が地域保健サービスに移動するだけになってしまいがちなのではないかと少し心配な気もします。自分ももちろん含めてですが、精神疾患に対する正しい知識と理解を共有するための反スティグマキャンペーンも必要だと思いますし、病床削減だけが先行しないように先進の事例に学んでいきたいと思います。
- 2008/8/18 in
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