放射線治療と免疫細胞療法の併用によるがん治療の可能性について 東大病院22世紀医療センター公開セミナーを聴講して
2006年8月23日 東京大学医学部鉄門記念講堂にて開催された東大病院22世紀医療センター公開セミナーに行ってきました。http://www.h.u-tokyo.ac.jp/news/news.php?newsid=133「放射線治療と免疫細胞療法の併用による新たな集学的治療の可能性」という難しそうなタイトルを理解して申し込んだというよりも、放射線科医であり東大病院で緩和ケアに取り組んでおられる中川恵一先生のお話を聞いてみたくて応募したのですが、難しい内容を一般市民へも分かりやすく解説していただき、よい勉強になりました。会場には医療関係の方やマスコミの方も見えているようでしたが、ご自身やご家族のためにがん治療に対する知識を求めて集まっている方が多いように見受けられました。200名定員の鉄門講堂がほぼ埋まっていました。がん登録制度の必要性についてもお話があり、参加者に対するアンケートがありました。
プログラムは①「進行癌に対する新しい免疫放射線の可能性」 ②「日本の癌治療のウイークポイント:放射線治療と緩和ケア」 ③「がんに対する免疫細胞治療-22世紀医療センターにおける新たな取組み」の3本立てでした。
①「進行癌に対する新しい免疫放射線の可能性」は、東大病院放射線科の白石先生が研究されているマウス実験の結果の報告でしたが、確かに新たな治療法として希望が持てるように感じました。マウスの左右両側にがん細胞を移植し、右側だけに放射線治療を行った場合の比較と、右側だけに放射線治療の後に免疫増強剤を投与した場合の比較でした。放射線治療を行った方ががんの進行を遅らせることができ、さらに免疫増剤を投与した場合は明らかに進行が抑制されていました。また右側だけに放射線治療をしたのに、左側のがん細胞も進行抑制され、免疫増強投与を行った場合はその抑制度の効果も上がっていました。この効果に着目し、放射線治療に免疫細胞療法を組み合わせることで、放射線照射量を抑えながら効果的な治療効果が期待できそうとのことでした。身体が本来持っている免疫機能ってすごいなぁと感動しましたし、新たな可能性を予感させる研究なのだということが分かりました。
②「日本の癌治療のウイークポイント:放射線治療と緩和ケア」においては、中川先生が現在の日本のがん治療について、また放射線治療と、なぜ今がん登録制度が必要なのかについて非常に分かりやすく解説して下さいました。日本人の死因の3分の1は癌であるが近い将来には5割、つまり2人に1人はがんで死ぬであろうと予測できるのに、まだ日本のがん対策は遅れていることや、昔は主に感染が原因と考えられる胃がん、子宮頸がん、肝癌が多かったが、食生活の変化によって大腸がん、乳がん、前立腺がんが多くなっているように社会変化と連動していることなどを分かりやすくカラフルに色分けしたグラフで図示していただきました。又放射線治療を受けた方で献体された方の解剖結果から放射線治療による免疫細胞の活性化の様子などをビジュアルに分かりやすく解説いただきました。胃がんが多かったために癌の治療=外科手術、という図式が出来上がってしまいまだ浸透していない放射線治療についての理解を深めることができました。がんと向き合うためにも、状況を正しく分析するためにがん登録制度が必要であり、それは次の世代へのボランティアであり国民全体の財産となる、との中川先生のお言葉が印象的でした。
③「がんに対する免疫細胞治療-22世紀医療センターにおける新たな取組み」では、免疫細胞療法に取り組まれている垣見先生のお話でした。免疫細胞療法については耳にしたことがあるけれど、というくらいほとんど何も予備知識がなかったのですが、非常に熱心にご説明いただき、なんとなくは最低限のことは分かった、と思っています。もともと身体の中ではがん細胞と免疫細胞が戦っているけれど高齢化により少しずつ免疫細胞の監視機構が衰えてしまうことでがん細胞が増殖していく仕組み、そして免疫細胞であるリンパ球にもいろいろな種類と役割があること、25mlの採血した中から免疫細胞を抽出、培養して活性化させたものを点滴によって体内へ戻していくそうです。血液を扱うための施設は非常にクリーン度の高い施設で厳重に管理されている様子も興味深かったですし、又それぞれのリンパ球が癌細胞を殺している様子を動画で見せていただき、大変分かりやすかったです。免疫細胞は分子レベルでがん細胞を認識することができる、ということ、また免疫細胞は個人レベルで違うのでオーダーメイド感覚に近い治療とのことでした。まだこれから確立されていく段階にあっても、新たな可能性として期待できるものだと思います。この研究は株式メディネットさんhttp://www.medinet-inc.co.jp/の寄付講座だそうですが、今秋には東大病院でも実際の治療の選択肢となるように申請中とのことでした。
最後に会場から質疑応答の時間がありました。放射線治療についての質問をはじめ、セカンドオピニオンを期待しての質問、手術と放射線治療の違いについて、また現在の日本のがん対策についての憤懣なども寄せられました。それぞれに対し、中川先生をはじめ白石先生、垣見先生、そして聴講されていた東大病院の先生方が、皆さん非常に丁寧に思いやりを持って回答している姿は好感を通りこして感動しました。それだけ癌で悩んでいる方が多く、情報整備も進んでいないのだとも実感しました。中川先生の最新著作の「ビジュアル版がんの教科書」などは分かりやすい本ですが、このような本や情報が増えること、そしてやはりがん登録制度がきちんと普及することなどが必要だと思います。また今後ともこのような機会があったらぜひ勉強させていただきたいです。非常に有意義なセミナーでした。ありがとうございました。
- 2006/8/25 in
- 先端医療
- by Mika
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